回顧録:2005年のメディア環境概観を思い出してみます

回顧録:2005年のメディア環境概観を思い出してみます

2005年に僕が記したインターテクストブログを、このセミナーを機に再読している。ほぼ当時の予測どおりの現実が眼前に広がっている。自らの思考を再度トレースするために、そして新しい現実に対応する手段とビジョンを創造するために、過去の投稿を少しずつ紹介して行こうと思う。お付き合いください。

マーケティング&コミュニケーションの近未来

本日を以て、当社は設立から満4年。創業5年目に突入する。2000年7月に㈱博報堂を離れ2001年2月に会社を設立して以来、ここまで順調な伸張を続けてきた。当社が相応に業績を伸ばして来れた背景には、やはり企業のマーケティング&コミュニケーション戦略の立案と実施の実態が以前と大きく変わってきたことがある。企業は、商品やサービスを顧客に提供し、収益を上げ、それを株主或いは広義で社会に還元するというのが一般的な役割だろう。戦略のフレームは以下の順でより具体性を強めていく。
①経営戦略
②事業(ポートフォリオ)戦略
③マーケティング戦略
④コミュニケーション戦略
⑤メディアプラン
⑥実際の戦術施策
企業はこの①~⑥までの各レイヤーで、最良のビジネスパートナーを必要としている。ここ数年、そのパートナー選びの基準は大きく変わりつつある。そして、これから更に大きく変わっていくだろう。当社はマーケティング&コミュニケーション戦略領域の再編を機会に、独自のポジションを確保することを目指しているのだ。
具体的なビジネスパートナーをイメージしてみよう。①②の領域はビジネスコンサルティングファームの得意分野である。彼らは経営者と視点を同じくし、経営資源の再配分やシステムの見直しを図る。③のマーケティング戦略における上部構造である4つのP(Product/Price/Place/Promotion)までが彼らの守備範囲だ。マーケティング戦略の下部構造はより顧客よりの思考が求められる。すなわち、TPC(Target/Positioning/Concept)のフレーム作りである。ピーター・ドラッカーは企業のミッションを「収益を上げること」から「顧客を作り出すこと」へとシフトさせた。その意味でも、マーケティング戦略の下部構造TPCの有意義性が理解できる。しかしこの領域に特化したプロフェッショナルグループは現在のところ見当たらない。
④のコミュニケーション戦略はあくまでも③で設定されたマーケティング戦略を実現するための方途としてデザインされるべきである。そしてそれを最も低コストで実現させるためのメディア戦略が策定され、必要なプロモーション等の施策が実施される。この領域は従来から広告代理店の担当である。特に大手広告代理店は③~⑥までを統合したひとつのサービスとして提供し受注してきた。ここにいくつかの問題点が生じる。広告代理店は⑤のメディアプラン(厳密にはメディアバイイング)のバックマージンが収益源であるため、③~⑥全体の最適化を行うことではなく「⑤の実施を自己目的化してしまう」傾向にあることだ。これは依頼主である企業の利益と相反する構造である。また④のコミュニケーション戦略においては、広告制作物市場ともいうべき領域が存在し、広告制作者はその市場内での「当該制作物ポジショニングを広告主の戦略実現よりも優先してしまう」という笑えない本末転倒も起こる。また、度々このインターテクストブログでも触れているようにメディア環境の変化は一般生活者の知覚・購入プロセスに革命を起こしてしまった。テレビを中心としたマスメディアの影響力は低下傾向にあるにも関わらず、その価格は依然として高い。この点を指摘したのが日経ビジネスの特集「もうCMでは売れない」である。ここまでをまとめてみよう。③~⑥領域を長く担当してきた広告代理店は、以下の3つの問題を抱えている。
A)ビジネスモデルにおける依頼主との利益相反
B)困難な広告制作の目的性確保
C)従来メディアの効果に対する疑義
結果、2005年2月25日の日経新聞本誌に掲載されているとおり、ネスレ、富士重工業、日本マクドナルド、ホンダ、コカ・コーラ、LVMHなどの先進的な企業はメディアのセントラルバイイングによる広告代理店の集約と取り扱いコミッションの低減を志向し始めた。僕自身もこうしたプロジェクトを複数担当し、大きな改善インパクトを創出した経験がある。この流れはもはや不可逆である。上記の日経記事によると広告代理店はそのビジネスモデルを変えるのではなく、従来型のビジネスモデルを維持したまま中国市場などへの拡大を志向しているようだ。そしてその戦略は広告代理店が持つ上記3つの課題解決には直結しない。
マーケティング&コミュニケーションサービスの今後はおそらくコンピュータ市場の歴史になぞらえて予測することが可能だろう。メインフレームの時代には、IBMがシステムコンサルティングから端末或いはデータ管理と保守運営まですべてを提供し得ていた。しかしこの垂直統合型の市場は、システム、PCハード、OS、ソフト、ASPなどいくつかの層に分化し、それぞれの分野に特化した優れた企業を生み出していった。マイクロソフトしかり、デル・コンピュータしかり。マーケティング&コミュニケーションサービスにおける広告代理店はメインフレーム時代のIBMのような存在と言えよう。今後③~⑥の各層は分化し、それぞれのサービスに特化した新しい企業が新しいビジネスモデルでクライアントサービスを展開するようになる。事実、クリエイティブ領域ではそうしたケースはもはや珍しくない。
当社はその先鞭を付け、マーケティング戦略領域に特化した新しい有力なプレイヤーを目指したいのだ。当社の考えるマーケティング戦略とその実施ポリシーは先述のとおり。5年目も「まっすぐに」「顧客の生活を見つめ」「クライアントメリットを見据え」知恵を絞って行きたい。皆様のご指導とご鞭撻を改めてお願い申し上げます。

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