回顧録:2005年の通信と放送の「融合」について思いましてみます

回顧録:2005年の通信と放送の「融合」について思いましてみます

本日の日経本紙「経済教室」に理解しやすいコラムが掲載されたので、内容を参考にしつつ情報を整理しておきたい。

コラムの筆者はスタンフォード日本センター研究所長の中村伊知哉氏である。氏の分析から推測するに、マクロ的には2005年が「通信と放送の融合元年」と位置づけられていくようである。KDDIの通信回線を利用した有線放送への進出、USENのストリーミング事業Gyaoは500万人規模の視聴者を持つまでに成長し更に拡大することは疑いない。e-JAPAN構想により世界に先駆けて普及した光ブロードバンド環境に対応し、放送事業者もようやく重い腰を上げつつある。電通も民放キー局とネット配信事業を立ち上がる旨を発表し、新たな広告市場でのドミナントを狙うわけだ。
ここで改めて気づかされたのは、通信と放送の「融合」を図らなければならないのは日本固有の課題だ、ということである。わが国の通信事業は「電気通信事業法」や「NTT法」で、放送事業は「放送法」でそれぞれの領域が縛られている。通信事業のコアバリューはインフラにあり、放送事業のそれはコンテンツにあるとされるのが一般的。しかしわが国では放送事業者もインフラ事業であり、それゆえにコンテンツがインフラに帰属して流動性(多次利用の可能性)を持ちにくく、更に本質的にコンテンツ市場での競争に晒されないことからクォリティの低下を招いている。


中村氏が引いている総務省のデータによれば、テレビ番組の映像産業に占める割合は金額ベースで57%、映像制作量の92%を占めている。更にこれらのコンテンツ(テレビ番組)の大半はテレビ放送で完結し、DVDやインターネットなどで二次利用される割合は8%に過ぎないという。この状況の問題は、先述の通り、放送事業者がインフラを占有し、結果としてコンテンツの高質化と流動化を阻害している点に集約されるだろう。
海外に目を転じて見れば、MSとMTV、AppleとABC、GoogleとCBSなどのコラボレーションが現実化している。そこには日本のような「法律の垣根」は当然存在しない。故に野心的でかつ有意義な事業が誕生してくる可能性は高い。この状況は長期的なスコープで日本の競争力を毀損する危険性を孕んでおり、迅速な法体系の改訂と戦略的な取り組みが必要だ。先日発表された「サーバー型放送」は新たな受信機ハードの需要促進策に矮小化されていおり、国際競争を睨んだ戦略とは考えにくい。新たな情報環境、メディア環境の誕生は、マーケティング戦略をより高度で有意義な方向へと導いてくれるだろう。携帯ブロードバンド環境の実現はおそらく世界で日本が最も早い。中村氏が指摘するようにNHKの番組資産を通信利用可能な状況を作り国際的にも評価されている日本独自のコンテンツの戦略的配信などが実現されることを期待したい。

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